公益財団法人 小林製薬青い鳥財団

贈呈式

2024年度 贈呈式

2025年3月7日(金)リーガロイヤルホテル大阪にて、「小林製薬青い鳥財団 2024年度贈呈式」を開催いたしました。

第8期目を迎えた今年度は、顕彰事業(小林製薬青い鳥財団賞)1件、助成事業として調査研究5件、支援活動16件に対し、表彰と助成金の贈呈を行いました。また、贈呈式後には交流会を開催し、採択者同士の情報交換がなされました。

贈呈式の様子

冒頭の理事長挨拶の後、今年度の採択者の皆さまの中から5つの団体に、各々の活動内容について、スライドを用いてプレゼンテーションを行っていただきました。その後、採択者の皆さまを代表して、「特定非営利活動法人キープ・ママ・スマイリング」光原様(小林製薬青い鳥財団賞)へ賞状とトロフィーの授与、「天理大学」徳島様(調査研究助成)、「特定非営利活動法人ミュージック・シェアリング」鈴木様(支援活動助成)に対し、目録の授与が行われました。

プレゼンテーション

お茶の水女子大学
山田様

このたびの採択に際し、お子さん達やご家族の幸せに少しでもプラスになるように成果を挙げていかねばと、改めて心に誓っております。また、関心や志が重なる方達とお会いでき、勇気が湧いてまいります。

私達は「重度心身障がい児と『共に創り・共に踊る』アートベース・リサーチ」というテーマで、「ダンスフェス」を開催しようと計画しています。私は公認心理師・臨床心理士で、ダンスセラピーという身体的心理療法を専門としており、特別支援教育、理学療法、舞踊教育の専門家や保護者の方達を共同研究者として、当事者参加型のインクルーシブリサーチにも取り組んでいます。

これまでも、特別支援学校の生徒さん達との少人数のダンスセラピーセッションを続けてきました。ダンスセラピーでは、自分らしく身体を動かせれば、又は動かさなくても身体で人と関われば、それがダンスだと考えます。好きな音楽で好きな人達と踊ることを身体ごと楽しんでいる生徒さん達の姿に感動し、私の方が多くを教わっています。ある時、保護者の方達が、「こうやって皆で楽しめる場所が地域にもあったらいいな」とおっしゃいました。自宅と学校との往復になりがちな中で、リラックスして楽しめる機会が“あったらいいな”、いろんな人と一緒に“踊れたらいいな”、とダンスフェアのアイデアが広がり、研究助成プログラムに応募する原動力となりました。

また、財団ホームページに紹介されている「人と社会に素晴らしい快を提供する」というメッセージの「快」についても考えました。生徒さんや保護者の方達にとって「快」であるように活動するのはもちろんのこと、私達研究者も「快」をもらい、自身の障害観・研究観が変わっていくという体験をしています。この実践研究プロジェクトを通して、関わる人皆の変化を捉えてみたい、ダンスと障害のある子ども達が持っている力を描き出して、社会に伝えていきたいと思っています。

HNRNP疾患患者家族会
鈴木様

HNRNP疾患は、2010年代の後半頃に世界で報告された超希少疾患で、国内の患者数は多く見積もっても30人~50人ほど、世界でも700人~1,000人以下と言われており、HNRNPという遺伝子の名前から疾患名が付けられています。遺伝性ではなく突然変異による障害で、多くの子どもは重症心身児であり、発達の遅滞、知的障害、肢体不自由などが現れます。私の娘も現在5歳ですが、立てませんし歩けませんし話せません。生後9ヶ月ぐらいの発達です。その他てんかんや、数は少ないですが心疾患・腎疾患等をきたす疾患です。歴史が浅く患者数が少ないため認知度が低く、小児慢性特定疾患や指定難病などにも指定されていないため、医療のみならず社会福祉の点でも支援が行き届いていません。そのため私達は、まだ結成後間もない団体ですが、アメリカなどの国際的な患者会とも蜜に連携して活動をしております。昨年6月には、初めて日本人同士で大阪に集まることができました。希少疾患であるために孤独な日々を過ごしている私達にとって、大きな喜びでした。交流以外にも、私達のことをもっと知ってもらうために、学会への参加や、SNS・ウェブサイトでの啓発活動も行っております。今回の助成金を用いて、今年も11月にまた大阪でイベントを開催する運びとなりました。

私達が大切にしている言葉があります。『Rare, but not alone』~私達は確かに希少だけれども孤独ではない。皆で子ども達の未来を作っていこう~。アメリカでは治療のための臨床試験が始まっており、同様の臨床試験の日本での導入を、患者会として声を上げていきたいと思っております。

最後になりますが、このようなできたばかりの会にも関わらず、勇気と力と希望をいただきましたことに、心より御礼申し上げます。

般社団法人スペシャルキッズサポート振興協会
大舩様

スペシャルキッズとは何かということの説明からしたいと思います。欧米では、スペシャルなニーズのある子ども達という意味で、障がいや重症の病気のある子ども達を「スペシャルキッズ」と呼んでいます。本団体は、ある小児科医の活動からスタートしました。その医師はイギリスで、重病の子ども達の居場所を作り、どんなに重い病気があっても一般の子ども達と同じように遊びも学びも大切にし、その家族も含めた支援をする活動を見てきました。帰国後、日本にもそういう場所や活動が“あったらいいね”と考えたところが、本会の活動の原点となりました。

この活動を始めるにあたり、スペシャルキッズをサポートできる人達を創出することが、より良い社会作りの大きな力になるのではないかと考え、まずはできることから始める“スロースタート”を合い言葉として、各地で同じような活動をしている団体が交流する「集いの場」を開催してまいりました。

実は昨年もこの贈呈式に立たせていただきました。スペシャルキッズをサポートする人達を「育てる活動」に対し、助成金採択をいただいたからです。おかげさまで48人の「支援士」が誕生しました。実は、私どもが一番やりたくてなかなか手がけられなかったことでしたが、財団の支援のおかげで実現できました。そして今回は、せっかく誕生した「支援士」のみなさんに、さらに力と経験をつけて中級・上級の支援士になっていただくため、スペシャルキッズの方とご家族に協力していただき、実際の支援体験を通して自分達のスキルにプラスして欲しいと願って「上級実践講座」を提案したところ、再びご採択いただきました。まさに私たちにとりましては、大きく背中を押していただいたような気持ちです。しっかり頑張ってまいります。

東京おでかけプロジェクト
中嶋様

私達は、2019年から医療的ケアや障害がある子どもとご家族を対象に、全国の心躍る場所でおでかけイベントを開催しています。

私は以前、病気や障害のある子どもとご家族向けの施設を整備するプロジェクトに関わっていたのですが、整備には何十億というお金がかかり、「これで社会が変わっているのだろうか」という思いをずっと抱いていました。そんな中、呼吸器をつけているお子さんとそのご家族と仲良くなり、知り合いが運営する銭湯を開店前に貸してもらい、お連れしたことがありました。銭湯の方達が歓迎して下さったこともあり、「どうしてもっとおでかけしないの?」とそのご家族に聞くと、「人の目が気になるから出かけられない」と教えてくれました。私は、普段過ごす街中に、もっとご家族がふらっとおでかけできる場所を増やしたいと考え、東京おでかけプロジェクトを立ち上げました。

私達は、「『行ける場所』ではなく『行きたい場所』」へ行くことを大切にしています。例えば、東京にあるカレーの街・神保町にある子どもの本専門店では、プロの声優さんを招いてお話し会をし、その後カレーパンを食べて交流を楽しむ家族向けイベントを開催しました。また、お母さん達向けには、銀座の高級なバラ専門店でプロの方にメイクをしてもらったら、プロのカメラマンに撮影をしてもらい、資生堂パーラーでアフタヌーンティーを楽しんでいただくような催しも。

今年は、京都の路面電車を貸し切って世界遺産の仁和寺までおでかけしたら、ミシュラン三ツ星レストラン出身シェフの行楽弁当を楽しむご家族向けイベントを計画しており、移動も伴う大きなチャレンジになります。その他、我々の自主事業として、医療者と協働してお母さん達の罪悪感がどうすれば消えていくのかという調査をまとめたり、医療的ケアのある子ども達が視線入力でデザインしたグッズをチャリティーショップで販売することにも挑戦していきたいです。

特定非営利活動法人ソルウェイズ
高木様

ソルウェイズは、医療的ケアのある重症心身障がい児を在宅で介護している保護者が集まって作った法人です。私達は、どんな重い障害があっても地域で生きていくということを理念としております。北海道では札幌市に大きな病院が集中していますので、地方にいる子ども達も札幌市に集まってきます。それは、生まれたところでは生活できないということでもあり、私達はなるべく地域で過ごすというところを中心に考え、活動しています。現在、「子ども未来支援拠点あいのカタチ」という小児科と医療型短期入所を提供する建物を建設中です。日中の支援だけではなく、夜間を含め24時間の支援ができるようにという目的で建設しているものになります。

24時間支援と共に、私達が課題としてきたのが、災害時の支援拠点機能です。6年ほど前に北海道で大きな地震があり、北海道のほぼ全域が停電するブラックアウト現象を経験しました。ソルウェイズを利用している多くの方が人工呼吸器を使っており、当時私達ができたことは、避難所か入院場所を案内することでしたが、入院の病床も限られており、信号のつかない道路を車で走りながら、とにかく発電機を配ることでした。その時は、全国重症児者デイサービスネットワークの方々から発電機の提供があり、なんとか乗り切りました。当時、福祉避難所も開設されていましたが、医療的ケアのある重症心身障害児の子ども達が利用するのは難しい状況でした。そこで、今回建設する建物に、発電と蓄電機能を持った支援拠点を作りたいと申請させていただきましたところ、採択していただきました。

この蓄電設備が完成しましたら、まずソルウェイズの子ども達と避難訓練を兼ねたデイキャンプを行う予定です。災害訓練をみんなで楽しみながら行った、という活動報告ができたらと思っております。

賞状等の授与

特定非営利活動法人キープ・ママ・スマイリング 光原様

私達は、入院している子どもに付き添う家族を支援する活動をしております。子どもが入院すると、多くの親が病院に泊まり込むことになりますが、親は患者ではないため、病院にベッドも食事もありません。それでも「頑張っているのは子どもだから」と自分のことは後回しにして付き添います。しかし、このような日々が長く続くと親の心身も限界に達します。私も、長女と泊まり込んだ時に3ヶ月目に高熱を出して倒れました。

“子どもが元気になるためには、お母さん達が笑顔で健康であること”。これが私達の活動の核となる考え方です。しかし、付き添う親に対しての公的支援はほとんど無く、社会も親自身も「親が頑張らなければ」と思い込んでいます。そこで私達は、2014年にNPOを設立し「付き添う親への直接支援」と「付き添い環境自体を変えるための働きかけ」を2本柱として活動を始めました。

私が付き添い生活で最も辛かったのが、毎日の食事でした。そこで、まずは「美味しいご飯を届けること」から始めようと考えました。ところがその矢先、新型コロナウイルスの影響で全国の病院が面会禁止になり、院内にいた親は「一度帰るともう戻れない」状況に置かれ、ほぼ軟禁状態となりました。そこで私達は、多くの企業から寄付して頂いた常温保存可能な食事や生活用品を詰め合わせた『付き添い生活応援パック』を病室へ届ける活動を始めました。同時に、当事者の声を国に届ける活動も行ってきました。その結果、厚生労働省や子ども家庭庁の方々がこの問題を受け止め、昨年、国として一歩を踏み出すことができました。

この問題は、社会全体で支え、応援していかなければならないと思っています。今回の受賞は、この問題が社会に少しずつ認知され始めた証だと感じています。私達はこれからも、今付き添っているご家族への支援、環境改善への働きかけ、そして「みんなで応援していこう」という共感の輪を広げるために力を尽くして参ります。

天理大学 徳島様

現在、在宅で医療的ケアを必要とする子ども達のケアは、ますます高度化・複雑化しており、支えるご家族の負担も大きくなっています。特に、短時間でもご家族の自由時間を確保できるように支援する在宅レスパイトケアは、今後さらに重要な役割を担うと考えられます。在宅レスパイトケアとは、仕事や自由な時間を確保するために、訪問看護師が2時間以上のお預かりの看護を提供するもので、特に医療的ケア児の家庭にとっては貴重な支援となっています。2021年に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が施行されたことで、各自治体で在宅レスパイトケアの提供が広がっていますが、自治体によってサービスの質は様々であると推測しております。

そこで私達は、タイムスタディ法という行動時間分析手法を用いて、在宅レスパイトケアの実態とその質を客観的に評価することを目指しています。具体的には、まず、奈良県内の訪問看護師が行う在宅レスパイトケアの内容や時間、養育者との情報共有の時間、医療的ケアや遊びの支援に費やされる時間を、タブレット端末で計測します。これによりケアの種類、頻度、所要時間を定量的に把握します。またデータ分析においては、ケアの内容や時間だけでなく、年齢や疾患、ケアの種類、家族のサポート体制や訪問看護師の経験年数など、多角的な要素を考慮して分析します。これにより、個別性の高いケアが求められる在宅レスパイトケアの実態を、より詳細に把握します。さらに、研究の成果を用いて、訪問看護師の研修プログラムの改善や自治体による在宅ケア支援の施策への提言を行う予定です。

この研究を通じて得られたデータを基に、訪問看護の現場で活用できる知見を提供し、ケアの標準化や効率化を図り、結果として、地域で生活する医療的ケア児とご家庭に素晴らしい『快』を提供できる在宅レスパイトケア実現に向けて貢献していきたいと考えております。本助成を励みに、実りのある研究になるよう尽力いたします。

特定非営利活動法人ミュージックシェアリング 鈴木様

我々ミュージックシェアリングは、1992年に世界で活躍するバイオリニスト、五嶋みどりによって設立され、世界中のあらゆる人々に本物の音楽を届けることを理念に掲げ、芸術文化の振興、そして子ども達の健全な情操教育を目指して歩んでまいりました。現在、主に取り組んでいる内容は4つあります。1つ目は、特別支援学校などへの楽器指導支援、2つ目は、病院福祉施設などでの訪問コンサート、3つ目は、開発途上国との音楽を通じた国際交流、そして最後の4つ目は、山間・離島などでの僻地訪問プログラムです。その中でも1つ目の楽器指導支援は、2006年に関東の3つの養護学校から始まり、現在では計10校、そして参加者は約700人にも及ぶ規模となりました。これもひとえに皆様のご協力ご支援のおかげだと感謝しております。その一方で、世の中には音楽の喜びを知っていながら、その音楽を心ゆくまで体験できない方々がまだまだたくさんいます。そこには様々な事情がありますが、我々ミュージックシェアリングは、そのような方々の機会損失を少しでも多く補填し、そして世界の体験格差をなくしていきたいと考えております。また、SDGs が掲げる『誰も取り残されることのない社会の実現』の基盤作りにも広く貢献していきたいと考えております。

世界の規模に比べますと、我々ができることはまだまだ微力ではございますが、今回このような賞をいただいたことを励みに、今後も更なる精進をして参りたいと思います。

記念撮影

  • 記念撮影

交流会

贈呈式に続いて、交流会が開催されました。交流会では、情報交換の場としてお互いの交流を深めていただきました。また、会場の一角に各団体の活動紹介用のブースを設置し、ポスターや写真パネルの掲示、備品やパンフレットの陳列など、工夫を凝らした展示が行われました。

  • 交流会

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