公益財団法人 小林製薬青い鳥財団

助成事業

助成事例紹介

2024年度助成プログラムで採択された「HNRNP患者家族会」の代表 鈴木歌織様に、助成プログラムを完了した後の感想などをインタビューさせていただきました。
鈴木様は、わずか3年の間に、HNRNP疾患における日本初の患者会を結成し、LINEを使って日本全国の患者家族をつなぐ試みや、学会への積極的な出展、顔を合わせて交流できる患者会イベントの実施など、とても精力的に活動を行ってこられました。これらの活動についてのお話をお聞きしました。

採択年度

2024年度

採択プログラム名

超希少疾患 HNRNP 患者の疾患理解・孤立解消で社会・研究参加と社会課題の提言

採択金額

1,000千円

1. これまでの歩み

財団

皆様の活動は、希少疾患の患者会として活動を行いたいと考えている方々にとって、モデルになるような取り組みだと感じています。ぜひ皆様の成り立ちについてお伺いできればと、患者会を立ち上げるきっかけとなったエピソードがありましたら教えて下さい。

海外の患者会でもらった世界地図 “日本は真っ白・・・”

鈴木様

まず、自分の娘が診断を受けたことがきっかけです。未診断疾患イニシアチブ Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases(IRUD)という、保険では対応していない、非常に複雑な遺伝子検査をする国の研究プログラムがあります。大阪母子医療センターで診断を受け、初めてHNRNPという非常に覚えづらい病名をもらいました。病名をもらったことで、自分でも色々と調べることができるようになり、診断を受けられたことは大きいと思いました。診断を受けた当時、日本の情報は一切なく、SNSや海外のサイトを検索するなどして、海外の患者会とつながることができました。そこでこの希少疾患に関する世界地図をもらったところ、日本は真っ白で、本当に自分たちが日本人として初めてなのだと実感しました。その後、その患者会の日本地区担当委員に私が就任し、主治医の先生などへこの活動のことを話したところ、同じような疾患の子どもがいると聞きました。病院のカウンセラーさんや医師の先生方が、お互いの家族の了承を取って連絡先を交換したり、同じ病院であれば診察時間を調整して顔合わせの機会を作って下さいました。このように、徐々にご紹介などでつながりが広がりました。

手探りで結成した患者会 チャンスを逃さずロケットスタート!

財団

HNRNP患者家族会様は、結成3年という比較的新しい団体ですが、助成プログラム実施期間中のやりとりなどから、とても統制が取れた安定した団体という印象を受けておりました。このようなイメージがあることについて、どのように思われますか?

鈴木様

実は、結成間もない頃、主治医の先生が、この希少疾患の症例について、日本遺伝カウンセリング学会で発表して下さることになり、同時に患者ブースへの出展をご紹介いただきました。期限が迫っていて、それに間に合わせるためにホームページやプレゼンの用意をするといった、ロケットスタートでした。これが、新しい団体なのに統制がとれた実行力のある団体というイメージにつながったのかもしれません。慣れないこと・初めてのことを手探りで進めておりましたが、この機会を逃さない方がよいと考えて、一年ほどかけて行おうとしていた準備を前倒しで進めました。やはり、診断がついてから、情報を得たいという気持ちや発信したいという勢いが、短期間での集中した活動につながったのだと思います。

“できる人が、できる範囲で”“目線を合わせる”を大切に

財団

お仕事やご家庭のある中での活動となるわけですが、両立にあたって、ご苦労されていることがたくさんあると思います。とくに大変だとお感じになることはどのようなことでしょうか?

鈴木様

今年の7月で3年ほど経ちますが、両立にあたって、私たちが会の活動で大切にしているのは、やりたい人、モチベーションがある人が、できることをできる範囲で行うスタイルです。LINEなどのコミュニケーションツールを活用し、ミーティングはオンラインで行っています。メンバーは、母親だったり、仕事があるので、子どもが寝ている時間帯や、休日に子どもの面倒を家族にみてもらいながら行っています。
2年目からは、毎年、LINEのグループ機能でつながっている患者会メンバーから運営委員を募集し、4人ほどで運営しているのですが、その中で、目線を合わせることが大事かつ大変だと感じています。運営委員の中で話し合ったことを他のメンバーへ伝える際は、メンバーそれぞれの理解度が異なるし、もしくは直接お顔を合わせた方ばかりではないので、自分たちだけが先走ってしまわないように、運営側の満足で終わらないように留意しています。

財団

現在、鈴木様が患者会代表を務めていらっしゃいます。この会を率いる代表を務めるというのはご覚悟があったと思いますが、代表に就任すると決めた際のお気持ちを教えて下さい。

鈴木様

まずは自らが情報収集のためにということが目的であったのですが、他の患者家族の方々とお話をして勉強していくうちに、医療と社会の壁というものに対して、取り組んでいきたいという意識が芽生えました。医療研究開発における患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)の取組が叫ばれていますが、こういった部分に自分のやるべきことがあるのではないかと感じています。

2. 助成プログラムの内容について振り返り

財団

ここまで皆様の成り立ちについてお伺いしてまいりました。
続いて、今回実施された助成プログラムの内容についてお話を伺いたいと思います。今回のプログラムは、「デジタル媒体の活用」「学会への出展」「患者会イベント」の3つの柱で構成されています。私どもの助成金は、これらの活動に必要な、動画制作費やAIアプリ・オンライン会議ソフトの使用料、冊子・パンフレットの印刷代、イベント開催時の専門家の謝金・交通費などに活用していただきました。

①デジタル媒体の活用~LINEオープンチャット~を開設

財団

まず「デジタル媒体の活用」ですが、これはSNSやHPなどのコンテンツの充実の他、アプリケーションの活用などが主な内容であると思いますが、これらの活動について教えて下さい。

鈴木様

ホームページには、私たちが収集した海外の情報などを掲載しており、内容によっては、医学的な要素も含まれるので、そこは医師の先生に監修していただいたりしています。海外の患者会が企画した英語の動画にAIを利用して吹き替えを付けるなどもしています。また、患者家族のためのLINEオープンチャットを開設しました。ここでは、お友達登録している方々が好きなタイミングでメッセージ投稿することができるのですが、会の連絡事項の他に、とてもバラエティーに富んだお悩み相談でにぎわっています。例えば、子どもが履く靴のメーカーの話だったり、放課後デイの情報だったり。自分自身、子どもが就学を迎えるタイミングで、これらの情報にとても助けられました。

②学会へ積極的に出展~基礎研究・臨床と社会をつなぎたい~

財団

2つ目の学会ブースへの出展ですが、これは主治医の先生からのご紹介で行っているのでしょうか?

鈴木様

きっかけは先生方からのお知らせであるケースもありますし、自分たちで探してくるケースもあります。専門領域の中で、一番関連性が強いのが遺伝子関連の学会になります。自分たちの疾患が病院の何科で診察を受けているかなどから推測して、関連する学会を調べることができます。基礎研究と臨床、社会をつなぐことが大切であると考えて、積極的に学会への出展を行っています。

③患者会イベントを開催~19家族とつながった!~

財団

3つ目の患者会イベントですが、対面とオンラインのハイブリッドで開催されたということですが、ご苦労されたことや、どのような成果があったと感じていますか?

鈴木様

イベントの開催にあたっては、協働してくれる他のNPO法人さんの協力を得ることができました。一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)の患者会リーダー養成研修会や、一般社団法人スペシャルキッズサポート振興協会のハミング・オアシスなどのイベントで連絡先を交換していた団体で、こちらからお声がけしました。
また、成果という点では、今回のイベントで、全国に35家族いると言われているなかで19家族とつながることができ、一定の到達を果たせたと思っております。周知活動には力を入れましたが、特に、色々な方向から情報を届けることが大事だと思いました。病院での周知は、医師の先生から渡してもらわないと届かないので、SNSなどの利用は効果があると感じています。

3. 今後の展望

限りあるリソースを大切に、続けるために無理をしない

財団

今後の展望として、皆様が活動を継続するために課題と思っている点や、解決したいと考えていることなど、教えて下さい。

鈴木様

やはりリソースの問題は常にあります。リソースはどれも不足していますが、中でも特に不足しているのは「人と時間」です。私たちは、できる範囲で行うことを大切にしていますので、毎年大規模なイベントを実施すると余裕がなくなってしまいます。そこで、2025年度は比較的精力的に活動を実施しましたので、2026年度は小規模に活動を継続し、2027年度に大きめのイベントを東京方面で開催することを予定しています。無理をすると続かなくなりますので、できる範囲で確実に続けていくことが目標であり、課題であると考えています。

4. 青い鳥財団の助成プログラムに応募して

財団

福祉に限らず、社会問題に向き合うときに、世の中にいくつか役割があると思うのですが、私どもの財団は、たまたま助成金をお渡しする役割で参加させてもらっていると考えています。ここで、青い鳥財団の助成プログラムについて、どのような感想をお持ちになったでしょうか?

鈴木様

他の助成金制度を調べる中で、法人格が無くても設立間もなくても応募できるプログラムが多くないので、このような制限が無いことは、とてもありがたかったです。正直なところ、採択されると思っていなかったので驚きましたが、贈呈式に出席して、日ごろからSNSをフォローしていたり、共感をいだいていた団体さんも多く参加していて、こういった皆さんと一緒に位置付けていただけていることが、とても励みに感じました。

財団

私どもの助成プログラムは、まさに皆様のようなスタートアップ時期を支援することも目標の一つとしております。本日は貴重なお話を伺わせていただき、ありがとうございました。

鈴木様

こちらこそ、私自身も勉強になりました。ありがとうございました。

インタビューを終えて

助成期間中から、私どもの助成プログラムを誠実に執行して下さっている様子が窺えて、今回お声がけいたしました。インタビューでは、鈴木様の穏やかで落ち着いた語りぐちから、患者会の活動に対する強い責任感や真摯な姿勢が感じられました。
HNRNP患者家族会様の活動が、これから永く広く続いていくことを、かげながら応援しております。

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